こころのウイルス【書評・レビュー】
まず、タイトルが良い。
人間が色々なことで上手く行かない原因を、「こころのウイルス」を名付けている。
普通は、障害とか、病とかと名付けると思うのだが、「こころのウイルス」と名付けるセンス。
著者のドナルド・ロフランドの軽妙な語り口によって、展開されていく語り口が心地よい。
特に前文は名文なので、一読の価値がある。
本書は、NLP(Neuro Linguistic Programing、神経言語プログラミング)を基礎にした話だ。
ある程度の年齢になると考え方や生き方、反応の仕方に一定のパターンができてくる。このことをNLPでは「プログラミング」と言っている。
我々の考えや行動は、様々な経験を通して神経と言語/非言語によってプログラミングされているのだ。
一度プログラミングができあがると、その後は条件反射のようにパターン化され反応するようになっていく。
パターン化された条件反射の中には、自分にとってプラスの反応もあれば、マイナスに働く反応も出て来る。
そのマイナスの思考パターンを変えるために、NLPでは、再プログラミング(リプログラミング)する方法も確立して来た。
人の思考パターンや行動パターンは、実証済みの効果的な手法を用いることで変えることができるのだ。
本書は、
「心が調和(コヒーレントな状態)にあれば、生き生きと暮らすことができる」
ことをモットーに、こころのウイルスを駆除して行くことを旨としている。
人間は健康な状態であるときは、コヒーレントであるという。
日本語で言うと、調和しているとか、同調しているとか
そういった感じ。わくわくし、生き生きしている状態といってもいい。
しかし、人間は現実を認識して、意味づける過程で
このコヒーレントな状態を乱してしまうのだ。
こころのウイルスは、4種類に大別されている。
「引き金ウイルス」、「思い込みウイルス」、「葛藤ウイルス」、「殺人ウイルス」の4つだ。
重要なのは、どのウイルスにも自分にとって「プラスとなる動機」が隠されていることにある。
プラスとなる動機を含め、ウイルスが作用するメカニズムを理解することが、こころの調和を手に入れるたったひとつの方法だ。
どのウイルスにも共通していえることは、自分にとっての「プラスの動機」が潜んでいてそのことに気づかないことがウイルスを排除できない大きな要因、という点。
ウイルスを排除するためには、プラスの動機をもつプログラムの仕組みを理解し、意識化することがまず第一段階だ。
この本を読んで、人間のこころって、随分単純なんだなぁと思った。
簡単なテクニックで、人間って変わっちゃうんだから。
もっと人間って複雑なんじゃないかともおもうのだが、
効果があるのは確かなような気がする。
この本をよんで確かに自分の心の在り方が変わり、
それに伴い、僕を取り巻く、さまざまな環境が変わってきているように思う。
人間が複雑か単純であるかどうかはともかく、
効果があるならテクニックは、テクニックとして認めて
単純である心のメガニズムを逆手にとって
うまくコントロールしてやれば、
思ったとおりの生き方ができるんじゃないかなという気になってくる。
でも、そのテクニックが体になじんでくると、
それがテクニックの域をこえて、
ひとつの思想というか、
考え方の枠組みになってくるところがある。
よい感じだ。
ここ数年、時代の空気として
個人の能力より、
こころのあり方が重視される傾向があるように思う。
それは、ビジネスの現場であってもだ。
この本を、個人の能力としてのハウツー本、
自己啓発本としてとらえるのでなく、
正しいこころのあり方を学ぶ本
として捕らえるといい。
もちろん、成功したいということが引き金になってもよいが、
本を読むことにより、思考がコヒーレントな状態になればよいなと思う。