【書評・レビュー】文章をダメにする三つの条件
文章の書き方の本は色々出ていますが、僕が優れていると思っている本の一つに、宮部修の「文章をダメにする三つの条件」があります。
文章ダメにする条件について書かれている本ですが、そのことから逆に、優れた条件が浮かび上がってきます。
見たこと、聞いたこと、感じたことだけを羅列しただけの文章
文章を書きたいことが多すぎる、というシチュエーションは往々に出てきます(特に、文章を書き始めた人に多い気がします)。
これを避けるためには、的を絞って、色々なことを書きすぎないようにするのが重要ですが、それも中々難しいですよね。
なので、最初に目的をはっきりさせておくこと、が大事だと解説されています。
誰もが思い、感じていることを一般論風に書いてある文章
例えば「趣味」について書いてある文章だと、「趣味はそれぞれの人の価値観、考え方、性格により異なってくる。でも生きていく上で、とても必要なもので、音楽鑑賞が好きな人は、音楽を聞くことで安らぎを得てストレスを発散できる」というように、誰もが分かる、辞書的な意味を書いてしまいがちです。
このように、一般論に終始している文章は面白くない、ですね。
それは、書き手の人格、人柄が伝わらないからです。
文章は、書き手の人柄が見えてくるからこそ面白いものです。
人柄は、他人と違ったことを思ったところで、最も際立って発揮されるものなので、作文では一般論に拘らず、主観を優先すべきです。
書くにこと欠き、理屈を積み重ねただけの文章
書くことがないと、どうしても理屈攻めになってしまいやすいです。
何か文章に足りないことがあると気づいていて、それを紛らわせるために変な理屈を持ち出して、あたかも大事なことが書いてあるかのように見せかけるのです。
これも、何がダメかというと、書き手の人間性が読み取れないからです。
本当に書きたいことを書くことが大事なのです。
どういう文章が面白いのか?
以上が文章をダメにする三つの条件でしたが、どういう文章が面白いか?についても解説されています。
人は他のことを知りたがるものだ。他人の考え、感情、言動すべてである。変わっていればいるほど、人の関心をひきつける。
誰しも、他の人に興味があるものです。
「我々が興味があるのは文章ではなく、他人だ」という筆者の考えが表されている一文ですね。
そこから、面白い他人=面白い文章に繋がっている、 という考え方に繋がっている、と展開しています。
悩みは全て、人間関係の悩みであるというアドラーの教えと根底で通じるものがあるように思います。
結局、人は人を愛するようにできているのです。
文章を書くときのコツ
また、文章を書くときのコツとして、以下のことが挙げられています。
書き手自身にしかかけないことを易しく書くこと
恥ずかしくて人に聞かせられないこと、を書くべき
観察力が文章力である。
私たちはみんな、他の人と違う部分を持っています。
多くの人はそれを醜い点として思っているかもしれませんが、他の人から見れば、それは非常に美しい部分なのです。
日本社会では、そういった「おかしさ」を極力排除して、まともな人間であるような思想が流れていますが、人の心を動かすのはそういった「まともさ」ではなく、「おかしさ」なのです。
「ゲスの極み乙女。 」の、「私以外私じゃないの」の歌詞にもこうあります。
恥ずかしくて言えないけど私にしか守れないものを身を削って紡いだら案外さ、悪くないかもよ
だから、周り、他人をよく観察し、多くのことを思うことが文章、ひいては人間性を磨くためのコツです。